元入金と相続税
「元入金は相続税の対象になるか」との質問がありました。
相続税の財産に事業用の資産は加算し、事業用の負債は減算して計算しますが、「事業主貸」 、「事業主借」は財産や負債の実態はありませんので相続税の計算に関係しません。
「元入金」は過去の利益や損失であったり、「事業主貸」、「事業主借」の振替したものの蓄積であることから、それ自体に相続税が課税されるものではありません。
相続税で課税の対象となるのは、あくまで、貸借対照表に計上された資産を相続財産とし、負債を債務控除として申告うることになります。(元入金は資産と負債の差額を意味します)
資産と負債を、それぞれ相続税法で言うところの時価で評価したものを相続財産、相続債務として申告することになります。
よって、資産と負債の差額である元入金そのものには課税されないことになります。資産と負債を事業用の財産、負債として申告したうえで、さらに元入金の額を相続財産として申告してしまうと、二重に相続税が課税されることになります。
なお、ここでいう貸借対照表は、相続開始時点(死亡日)のものですから、相続開始日から4か月以内に申告が必要とされている「準確定申告」をした際に作成した(死亡日現在)ものとなりますので、前年分の確定申告の控えを見ても正しい金額にはなりません。
死亡した年の1月1日から死亡日までの財務諸表(損益計算書、貸借対照表)を作成し、利益に対して所得税や住民税が課される場合には、それらの税金は「債務控除」の対象とし、その時点の現金預金や売掛金、機械装置などの資産を相続財産とするとともに、買掛金などの負債を債務控除することになります。
(2012/03/15)
(解説追加 2012/08/16)